万年筆のお手入れ方法をご紹介。基本手順や注意点を知って長く愛用しませんか?
さまざまなインクが楽しめ、滑らかな書き心地が人気の万年筆。なんだか最近書きづらかったり、使っていない万年筆があったりしませんか?この記事では、万年筆のお手入れ方法の、基本手順をご紹介します。お気に入りの万年筆を永く使うためにも、しっかり確認しておきましょう。
万年筆のお手入れのタイミングっていつだろう?
万年筆はどんなときにお手入れをすればいいのでしょうか?万年筆はボールペンとは違い、ペン先に直接インクが流れることで、滑らかな書き心地が叶います。逆にボールのようなペン先を塞ぐものがないので、乾きやすいのが弱点の一つです。
なので、実は万年筆の1番のお手入れ方法は「毎日書くこと」。毎日少しでも書くことで、インクがペン先に流れ、詰まりを防げるんです。もし特に問題がなくても、2〜3ヶ月に1回は万年筆のお手入れをおすすめします。また、下記に挙げる3点に当てはまる場合は、必ず万年筆をお手入れしましょう。
①筆記中のインクの出が悪い
筆記中にインクが出づらくなっている場合は、古いインクがペン芯の内部で詰まっている場合があります。インクが流れづらくなっているな、と感じたらお手入れをするサインですよ。
②違うインクを使いたい
染料インクから顔料インクに変えたい、気分を変えて、ブラックのインクからブラウンに変えてみたいなど、インクを変えたいときがありますよね。そんなときには、ペン先やペン芯、ペンの内部に、前に使っていたインクが残らないようにお手入れしましょう。
いつもと違うインクを使ってみたい!そんな方には「定番から個性派タイプまで。様々なシーンに寄り添うおすすめの万年筆インクたち」の記事はいかがでしょうか?新たなインクとの出会いがあるかもしれませんよ。
③長期間万年筆を使わない
長い間、万年筆を使わない場合もお手入れが必要です。そのままにしておくと、インク詰まりの原因になります。インクを抜いてお手入れし、改めて使いたくなったときに、また新しいインクを入れてください。
【万年筆の基本のお手入れ】水洗いしてみよう!
万年筆の基本的な洗浄方法は水洗いです。一見敷居が高そうな万年筆のお手入れですが、一度覚えれば簡単にできますよ。
カートリッジ式の洗浄方法
ボールペンのように、インクの入ったカートリッジを差し込むだけで使えるのが、カートリッジ式の万年筆です。今回は「ブラス万年筆」を例に、万年筆のお手入れを説明します。
(1)ペン先を手に持ち、胴の部分を外します。(ブラス万年筆は胴の部分を①の方向に回して外します。)インクがなくなったカートリッジを、本体から②の方向にまっすぐ引き抜いてください。
(2)コップに水かぬるま湯を用意し、ペン先を入れます。ペン先は繊細なので、ゆっくり入れるように注意しましょう。水に浸した状態で一晩放置してください。
(3)ペン先を水道水でよく洗い流します。その後、柔らかい布やティッシュペーパーなどで水気をよく拭き取ってください。インクが布やティッシュペーパーに付かなければ、洗浄完了です。よく乾かしてから新しいカートリッジを付けましょう。
ペン先と共に軸も育てたい「TRC ブラス 万年筆 真鍮無垢」
書けば書くほどその人に合った書き心地になるのが万年筆の魅力。「TRC ブラス 万年筆 真鍮無垢」で、ペン軸も一緒に育ててみませんか?真鍮を使っているので、経年変化が楽しめますよ。キラリと光る真鍮が、年月を追うごとに柔らかな色合いに変化していきます。
キャップをすればコンパクトなサイズになり、使うときは書きやすい長さになるのもポイント。小さなカバンをお使いの方にも、持ち運びやすい大きさです。独自規格ではなく、ヨーロッパタイプの専用カートリッジを採用しているので、インク交換が気軽にできます。ぜひ家でも外でも持ち運んで、思ったことを綴ってください。
TRC ブラス 万年筆 真鍮無垢
TRAVELER’S COMPANY
¥5,500(税込・参考価格)
インク吸入器コンバーターの洗浄方法
洗浄方法は、基本的にカートリッジ式と同じ水洗いですが、違いはコンバーターの洗浄方法。コンバーターには、ノブを回してインクを吸引する「回転式」と、先端をプッシュしてインクを吸引する「プッシュ式」があります。どちらもインクを吸引するように動作して洗浄しましょう。
- ペン先を手に持ち、胴を外します。
- コンバーターを、本体からまっすぐ引き抜いてください。
- コップに水かぬるま湯を用意し、ペン先を浸します。
- インクを吸引する要領で水を出し入れします。インクの色が出なくなるまで繰り返してください。
- コンバーターを取り外します。
- コップに水かぬるま湯を用意し、ペン先を入れます。
- 水に浸した状態で一晩放置してください。
- ペン先を水道水でよく洗い流します。
- 柔らかい布やティッシュペーパーなどで水気をよく拭き取ってください。インクが布やティッシュペーパーに付かなければ、洗浄完了です。
- よく乾かし、コンバーターを取り付けます。
インク吸入器コンバーターの洗浄方法
回転式(尾栓回転式吸入式)の洗浄方法
万年筆本体に直接インクを吸引するのが、尾栓回転式吸入式の万年筆です。尾栓というのは、ペン先の反対側にあたり、ねじのように回転させてインクを吸引します。洗浄するときは、本体全体を水に浸さないようにしましょう。水が入り込み万年筆の不具合の原因になります。
- ティッシュペーパーや布を用意し、万年筆の内部に残っているインクを出し切りましょう。尾栓を回し、本体内に残ったインクを押し出します。
- コップに水かぬるま湯を用意し、ペン先を入れます。
- インクを吸引する要領で水を出し入れします。インクの色が出なくなるまで繰り返してください。
- 柔らかい布やティッシュペーパーなどで水気をよく拭き取ってください。インクが布やティッシュペーパーに付かなければ、洗浄完了です。
- よく乾かし、新しいインクを入れます。
回転式(尾栓回転式吸入式)の洗浄方法
洗浄しても調子の悪い万年筆は、メンテナンスに出してみよう
洗浄したけれど、どうもインクの出が悪い…そんなときはメンテナンスに出してみましょう。インクが出ない理由は、インク詰まり以外の原因があるかもしれません。そんなときには、プロの職人さんに確認してもらいましょう。保証書の付いている万年筆は保証期間内で、製造工程上の不具合であれば無償で修理してくれます。
保証期間が過ぎたもの、書き味に違和感を感じるものは、ペンクリニックがおすすめです。ペンクリニックには、文具店で直接職人さんが調整してくれるものと、ペンを郵送すると職人さんが調整した後、送り返してくれるものがあります。インクが出づらいなどの不具合から、インクの出方や書き味の調整などを行って、好みの1本に仕上げてくれますよ。
一部メンテナンス対象外のブランドもあるので、事前にホームページを確認してみてくださいね。また、文具店で行われるペンクリニックは、コロナウイルスの感染状況によって、開催が中止になることもあります。開催店のホームページでチェックしてみてください。
万年筆の洗浄キットおすすめ2つ
水洗いで解決しない場合は、市販の洗浄キットを試してみてください。眠っていた万年筆が復活しますよ。
眠っていた万年筆を復活させる「万年筆インククリーナーキット」
通常のお手入れをしても書き味が悪い場合、古いインクが内部で詰まっている可能性があります。そんなときは、「万年筆専用インククリーナーセット」を使ってみましょう。インク洗浄液が、インク詰まりを解決してくれます。
プラチナ万年筆を愛用している方であれば、専用の洗浄スポイトが付いているのでさらに洗浄しやすくなります。ペン先首軸にスポイトを取り付ければ、下洗いをスムーズに行えますよ。インク洗浄液そのものはどのメーカーにも対応しているので、インク詰まりに悩んだらぜひ試してみてください。
万年筆インククリーナーキット
プラチナ万年筆
¥1,320(税込・参考価格)
ヨーロッパ規格の万年筆をお使いの方は「POINT万年筆洗浄キット」
こちらはインク詰まりやインク交換のときに使える、洗浄用インジェクター。ペン先首軸に取り付けて、コップに入れた水を出し入れさせます。ペン先に残ったインクを、時間をかけずに素早く取り除きたいときに使えるアイテムです。こちらはペリカンなどの、ヨーロッパ規格の万年筆専用になります。
万年筆洗浄キット
POINT
¥550(税込・参考価格)
【万年筆の基本のお手入れ】軸の汚れが気になるときは?
万年筆の軸に付く手垢は意外と目立つもの。気になったときにリセットできるといいですよね。
柔らかい布で拭く
中価格帯の万年筆の軸は、樹脂やラッカー塗装された金属軸を使っているので、ゴシゴシこすると傷付きやすいです。そこで、軸を拭くときは柔らかい布で優しく拭いてあげましょう。メガネ拭きなどのクリーニングクロスを使うのがおすすめです。
大切な万年筆を拭くならこの1枚「セーム革」
「セーム革」とは、鹿の皮を油でなめしたもの。極細の繊維で構成されているきめ細かい皮は、拭きたいものを傷付けず、水分、油分をしっかり取り去ります。宝石などの宝飾品や、カメラレンズなどの精密機器を拭くときにも重宝されているんですよ。
大事な万年筆のお手入れにももちろんぴったり。汚れたら水洗いすれば繰り返し使えるのも嬉しいポイント。1枚あると何かと重宝する「セーム革」を、万年筆のお手入れ用に使ってみませんか?
シリコン加工 高級セーム革 1枚
HARP(ハープ)
¥620(税込・参考価格)
木軸にツヤが欲しいときはオイルやワックスを使う
木軸万年筆の日々のお手入れは、乾いた布で拭くだけでOKです。ツヤがなくなってきたな、と感じたときにはオイルやワックスを木軸全体に塗ってみてください。木軸の乾燥を防ぎ、美しいツヤが出てきますよ。オイルやワックスを少量柔らかい布に取り、拭き上げてみましょう。
- 乾性油(紅花油、ひまわり油、クルミ油など)
- 木用ワックス(みつろうなど)
おすすめオイル
自然由来成分でみんなに優しい「木工用みつろうクリーム」
こちらの「木工用みつろうクリーム」は、みつろう・なたね油・亜麻仁油・椿油・ヒバ油をバランスよくブレンドしたクリームです。みつろうとは、働き蜂の巣から精製された”ロウ”のことで、保湿性と撥水性に優れています。リップクリームの成分として見たことがある方もいるかもしれませんね。
自然由来の成分から作られているので、お子さんやペットのいるご家庭でも安心です。木軸万年筆はもちろん、木の器やカトラリーにもどうぞ。お手入れ後の深みとツヤを増した万年筆に、さらに愛着が湧いてくるでしょう。
木工用みつろうクリーム
尾山製材
¥385(税込・参考価格)
ゆったり丁寧にお手入れするのも、万年筆の愉しみの一つ
万年筆のお手入れをするときにペン先をコップに沈めると、じわーっとインクが溢れてきます。コップに広がるインクは、何だか幻想的な気がしませんか?このゆったり流れるお手入れ時間さえも、万年筆の魅力。心を整えるように、万年筆のお手入れを愉しみましょう。