文具好きを魅了する万年筆のひみつ。歴史が詰まったアイテムもご紹介
文具好きやインク沼にハマる人をはじめ、多くの愛用者がいる「万年筆」。そんな万年筆がどのように誕生したのかご存じですか?今回は、そんな文具好きな人たちを魅了し続けている万年筆の歴史を解説します。万年筆の種類やおすすめのアイテムも紹介していますので、ぜひご覧ください。
シンプルながらも奥深い、万年筆の仕組み
サラサラとした筆記感や、なめらかなインクの広がりなどが魅力的な万年筆。そんな万年筆の特徴的な書き心地は「毛細管現象」と「空気の交替作用」という2つの性質によって実現しています。「毛細管現象」とは、細い管を液体中に立てたとき、管の中に液体が自然と吸い上げられる現象のこと。この現象は万年筆だけでなく、インクを使用するつけペンやガラスペンにも使われています。
万年筆のチャームポイントともいえるペン先にはペン芯と呼ばれるパーツが入っており、このペン芯には「インク溝」という細かい溝があります。タンク内のインクがこの溝を通ることにより、インクがペン先まで届いて途切れることなく書き進められるんですよ。
また「空気の交替作用」とは、容器内の液体が流れた分だけ空気が入る作用のこと。万年筆にはインク溝だけでなく、空気を取り入れる「空気溝」も付いています。この空気溝から、流れ出たインクの分だけ空気を取り込むことで、インクがスムーズに送り出されます。万年筆はこのように、インクと万年筆内部のパーツによる科学によって誕生したユニークな筆記具なのです。
文具界の立役者、「万年筆」の歴史
万年筆の仕組みを作ったのは誰?
万年筆が生まれる前の18世紀に入った頃には、インクとペンを一緒に持ち歩かなくてもいいように羽ペン、葦ペンに代わって金属ペンの開発が進んでいました。青銅や鋼鉄などの素材が用いられたものの、加工が難しかったりインク漏れが起こったりなど、さまざまな問題を抱えていました。
そんななか、現在のアメリカ発の高級万年筆ブランドとして知られる「ウォーターマン」の創設者である、ルイス・ウォーターマン氏が、1883年に世界で最初に毛細管現象を用いた万年筆「ザ・レギュラー」を開発。
ルイス・ウォーターマン氏は他にも、インク漏れを防ぐためのくぼみをつけたペン先や、クリップ付きのペンキャップ、インクカートリッジなども開発。現代にも引き継がれている、万年筆の基礎といえるシステムとデザインを開発したルイス・ウォーターマン氏は「万年筆の祖」とも呼ばれています。
日本初の万年筆は「筆ペン」
実は日本でも、ルイス・ウォーターマン氏が万年筆を開発する50年以上前に、万年筆のようにインクとペンが一体になっている「御懐中筆」が開発されていました。近江(現在の滋賀県)の鍛冶師である国友一貫斎が発明しており、最初の御懐中筆が「筆の筒に入れた墨汁を、筆先から滲み出させることで書き進められる」という仕組みだったようです。
その後、綿を詰め込んだ軸部分へガラス製のスポイトで墨汁を追加する仕組みを取り入れた御懐中筆も開発。見た目は筆ペンではありますが、インクタンクを備えていることから簡易的な万年筆のシステムといえるでしょう。
明治~大正時代に日本で万年筆が大流行!
日本で初めて万年筆が販売されたのは、1884年(明治17年)のこと。アメリカ製のペンである「スタイログラフィックペン」を輸入し、翌年に丸善が「万年筆」として売り出しました。その後、丸善を通してウォーターマン社の万年筆やデ・ラ・ルー社の万年筆である「オノト」を輸入、販売するなど、日本国内で万年筆ブームが到来したようです。
1920年頃には、日本を代表する文具ブランドのセーラー万年筆が初の純国産金ペン万年筆を開発。その後はパイロットやプラチナなどの多彩なメーカーとともに、万年筆の国産化を推進していきました。
ちなみに、デ・ラ・ルー社の万年筆「オノト」は、日本の有名な文豪である夏目漱石も自著のエッセイ『余と万年筆』にて大絶賛するほどの商品でした。
魅力的な万年筆には、さまざまな種類がある
古くから愛される伝統「吸入式」
数ある種類のなかでも、最も古いデザインの万年筆こそ「吸入式」。ボトルに入ったインクをペン先から吸い上げることで、ペンの内部にインクを補充する仕組みを取り入れており「万年筆特有の手間を楽しめる」のが魅力といえます。また万年筆1本で多彩な色やメーカーのインクを使用できるため、万年筆の楽しみを広げられるのも吸引式ならではの醍醐味です。
手軽に活用しやすい「カートリッジ式」
万年筆初心者から人気が高い種類が「カートリッジ式」です。専用のカートリッジをペン本体に差し込むだけでインクの補充ができるのが特徴で、吸入式のデメリットでもあった複雑なメンテナンスが必要ありません。手軽に万年筆を使いたい人にぴったりの種類といえます。
万年筆界のトリックスター「コンバーター式」
万年筆のなかでもちょっぴりユニークな存在が「コンバーター式」。吸入式とカートリッジ式の両方の補充方法ができるタイプの万年筆であり「両用式」とも呼ばれています。使うシーンや好みに合わせてボトルインク、カートリッジインクの両方を使い分けられるため、万年筆の魅力をとことん味わいたい人向けといえます。
メーカーのアイデアが詰まった逸品。おすすめの万年筆をご紹介!
インクの色を余さず楽しめるスケルトンボディ
フランス・パリ生まれのインクブランドであるエルバンから登場したのが、こちらの「コンバーター付万年筆」です。エルバン自慢の多種多様なインクカートリッジのなかから、自分好みの1色をセットすれば、あなただけの万年筆が完成!
ボディ部分は中身が透けて見えるスケルトン仕様なので、インク残量が一目でチェックできるのも便利。ペン先は定番の中字タイプなので、ビジネスからプライベートまでさまざまなシーンに活用できるでしょう。
コンバーター付万年筆
エルバン
¥1,760(税込・参考価格)
懐かしの人気モデルが復刻!
ドイツの筆記具メーカーであるKAWECO(カヴェコ)から展開されている「パケオ」は、20世紀始めに販売されていた人気シリーズの復刻版。樹脂製のボディにはマット加工が施されており、落ち着いた色合いと上質な握り心地を実現しています。
ペン先にはスチール素材を採用しており、カリカリとした独特の書き味は一度使うとクセになること間違いなし。キャップ部分のKAWECOのロゴマークも高級感を引き立てていますね。
パケオ 万年筆
KAWECO
¥2,750(税込・参考価格)
細部までこだわった高級感のあるデザインに惚れ惚れ
NATAMIの「カラー透明軸万年筆」は、デザイン性と耐久性の両立にこだわって設計された吸入式の万年筆。ステンレス素材のペン先を採用しており、軽い書き心地を楽しめます。細字タイプなので、手帳やノートの細かい部分にも書き込みやすいでしょう。
ダイヤのようなカットが施されたキャップ部分や、本体カラーにあわせてチョイスされたメタリックなリングパーツなど、細部のデザインにもメーカーのこだわりが光ります。手元を華やかに彩る、おしゃれな万年筆です。
カラー透明軸万年筆
NATAMI
¥3,580(税込・参考価格)
万年筆の歴史を通して、文具の魅力に触れてみませんか?
「手軽に使える筆記具を」という願いのもと、世界各国のさまざまなメーカーが開発に勤しんだ万年筆。職人達のひらめきと努力によって、多くの人から愛される文具へと進化していきました。今回ご紹介したエピソードを楽しみつつ、万年筆の魅力に浸ってみてはいかがでしょうか?
万年筆はきれいに書くのが難しいイメージを持っている方もいるかもしれません。
しかし基本的な持ち方のポイントをおさえるだけで、簡単にきれいな字が書けるようになりますよ。以下の記事では万年筆の正しい持ち方について解説していますので、ぜひご覧ください。