特長を知れば表現が広がる。多彩な絵の具の豆知識
絵画の色を塗るときなどに使用する「絵の具」。多彩な色や種類がありますが、実はそれぞれに違った特長があるんです。学校でも使用されるなど、私たちの身近な画材である絵の具。今回はその種類やそれぞれの特長と歴史について解説します。解説を通して、絵の具の魅力に触れてみてくださいね。
全ては「泥」から始まった。絵の具の歴史
多彩な色と質感で、私達の創作意欲を掻き立てる「絵の具」。その歴史は、旧石器時代にまでさかのぼります。当時は灰や鉱石、貝の殻などの粉に、にかわの液や油を加えて泥状にしたものが使われていました。これが絵の具のルーツなんだとか。
また、中世頃では絵の具を自作することが画家にとって修行の一環とされていたそうです。現代では絵の具はチューブに入っているのが一般的ですが、中世の職人たちが保存容器として使っていたのは、なんと豚の膀胱。当時の人々の発想と工夫が垣間見えますね。
しかし、天然素材から作り出せる色には限りがあるため、現在では石油をベースに作った合成染料が使われています。そのため、それまでは実現できなかった多彩な色を表現できるようになりました。
絵の具ってどんな種類・特徴があるの?
そんな歴史がある絵の具には、どのような種類や特徴があるのでしょうか。
学校でもよく使われる「水彩絵の具」
学校の授業でよく使われているものが「水彩絵の具」。一説では、5世紀頃に誕生したとされており、古い歴史を持つ種類です。一度絵の具が乾いても、水に濡れると溶けだすのが大きな特徴。パレットの上で固まった絵具も、そのまま再利用して絵が描けますよ。
透明水彩
水彩絵の具のなかでも、特に繊細なタッチを表現できるのが「透明水彩」。透明感のある淡い色味を楽しめますよ。塗り重ねによる色ムラが起こりやすい反面、ぼかしや混色などで一味違った表現ができるのが魅力的です。
不透明水彩
「不透明水彩」は色味がはっきりしており、下地の色に左右されることなく重ね塗りできるのが特徴です。塗り重ねによる色ムラが目立ちにくいので、使う絵の具一つひとつの色合いを活かせますよ。耐光性も高いので、美しい色を長く楽しめます。
汎用性の高い「アクリル絵の具」
石油化学の発展とともに20世紀後半に誕生した「アクリル絵の具」。顔料とアクリル樹脂を混ぜ合わせて作られています。乾燥すると耐水性が高くなるのが特徴で、その耐久性の高さから紙だけでなく木材・ガラス・石などの多彩な素材にも描き込めるんですよ。絵の具が持つ表現の幅を広げたといっても過言ではないでしょう。
アクリルカラー
「アクリルカラー」は、多彩な表現を得意とします。そのまま塗れば透明水彩のように透明感を活かした表現を、メディウム(添加剤)を混ぜれば不透明水彩のようにマットな質感になりますよ。絵のイメージに合わせて、多彩な表現を使い分けられます。
アクリルガッシュ
「アクリルガッシュ」は、マットな質感の表現を得意とする絵の具。光沢感は控えめですが、くっきりと発色します。そのためポスター制作をはじめとしたデザインの仕事や、美術大学の実技試験の1つである色彩構成にもよく採用されています。
厚みのある表現が魅力の「油絵の具」
15世紀頃から技法が確立され、ゴッホやフェルメールなどをはじめとした世界が誇る画家たちも愛したといわれている「油絵の具」。顔料と乾性油を練り合わせて作られており、水の代わりに油で溶かして描くのが特徴です。
溶かす油の量を調節することで濃度の微調節ができるため、1つの色が持つ多彩な表現を引き出せます。また、ほかの絵の具ではできない厚塗りによる重厚感を楽しめるのも油絵の具の醍醐味です。
古い歴史を持つ「日本画絵具」
「日本画絵の具」は、日本画に採用される絵の具の総称で、天然素材を元とした製法をそのまま残しているのが特徴。鉱石を原料とするものは「岩絵具」、土が原料のものは「水干絵具」といったように、使われている原材料によって名称が異なります。
素材によって、色味はもちろん性質も少しずつ違っているため、使う絵の具によって違った質感の絵を楽しめます。1枚の皿に1色ずつ絵の具をにかわ液で溶いて塗れば、自然素材ならではの鮮やかで上品な色味を堪能できますよ。
絵の具の「透明」と「不透明」の違い
①のりと顔料の配合比率
1つ目の違いは、のりと顔料の配合比率。水彩絵の具は、主に色を定着させる役割のアラビアゴムと、色のもととなる顔料で構成されています。このアラビアゴムと顔料の配合比率によって、透明か不透明かに分かれているんですね。
「透明」と記載のある絵の具は顔料の量がアラビアゴムより少ないため、透明水彩ならではの透明感を演出できます。対して「不透明」の絵の具は、顔料の比率がアラビアゴムより多いため、顔料の色味が強く表れますよ。
②絵の具の使い方
2つ目の違いは、絵の具の使い方。「透明」の絵の具は塗り重ねが苦手な傾向にあるので、多めの水で溶かしてサラサラ描くのに適しています。
対して「不透明」の絵の具は、色味がはっきりしていて塗り重ねが自由にできます。そのため少ない水で溶かして濃い色で描くのが適していますよ。
③塗った際の仕上がり
3つ目の違いは、地の色の上から違う色を乗せた場合の見え方です。「透明」の絵の具は下地の色が透けて見えて、「不透明」の絵の具は下地がしっかり隠れますよ。
お絵描き初心者におすすめの絵の具を4つご紹介!
絵の具の種類はわかりましたか?自分が描きたいものに合わせて、好みの絵の具を選びましょう。ここからは、お絵描きの初心者におすすめな絵の具をご紹介します。
鮮やかに塗り上げたいなら、ぺんてる/ポスターカラー
こちらは、「ぺんてる」の「ポスターカラー」。伸びがよくてスルスル塗れるのが魅力的な不透明水彩絵の具です。絶妙な色味の違いを楽しめる全12色がセットになっていて、混色で大活躍する白色絵の具は2本入っています。紙に映える鮮明な色味はお絵描きにはもちろん、ポスター作りやデザインにも便利ですね。
容器には、丈夫でありながら絞りやすいラミネートチューブを採用。最後まで残さず使い切りやすいのがポイントです。色の色相・明度・彩度を表すマンセル記号が記載されているため、配色や混色の際に便利ですよ。
絵の具 ポスターカラー 12色セット
ぺんてる
¥1,419(税込・参考価格)
ナチュラル素材にこだわってるから、子どもも安心。Lovi/ウォーターカラー
こちらは、フィンランドの雑貨ブランド「Lovi」の「ウォーターカラー」。封蝋のようにおしゃれにデザインされた固形絵の具が8色セットになっている、透明水彩絵の具です。付属の筆ですぐに色塗りを楽しめますよ。
絵の具はナチュラル素材にこだわっているため、万が一小さい子どもが舐めても大丈夫なのが魅力的。子どもの知育用としてはもちろん、家族で一緒にお絵描きを楽しみたいときにもぴったりですね。
ウォーターカラー
Lovi(ロヴィ)
¥2,750(税込・参考価格)
伝統的な日本の色をコンセプトに。ターナー色彩/アクリルガッシュ ジャパネスクカラー
老舗の画材メーカーである「ターナー色彩」が、伝統的な日本をコンセプトに開発したのが「アクリルガッシュ ジャパネスクカラー」。アクリルガッシュならではの強い接着力と耐久性で、さまざまな素材に塗ってもノリが良いのが魅力的です。
採用されているカラーは、臙脂色(えんじいろ)や濃縹(こきはなだ)をはじめ、日本で古くから着物の色として愛されてきたものばかり。落ち着いた上品な色味を楽しめますね。色を通して日本の歴史に触れられる、素敵な絵の具セットですね。
アクリルガッシュ ジャパネスクカラー
ターナー色彩
¥2,636(税込・参考価格)
ビビッドな色で創作意欲を掻き立てる。MIYA HIMI/ガッシュペイントセット
「MIYA HIMI」の「ガッシュペイントセット」は、全18色ものカラーバリエーションで使う人の創作意欲を掻き立てるアクリルガッシュセット。ビビッドな色味は、どんな素材の上でもしっかり発色してくれますよ。
絵の具はそれぞれゼリーカップに入って分けられているので、使いたい色だけスムーズに使えるのはもちろん、絵の具の交換も簡単です。専用のパレットも付属しているので、外出先でもすぐにお絵描きを楽しめますよ。
HIMI グワッシュペイントセット 18色
MIYA
¥2,800(税込・参考価格)
絵の具の魅力に、もっと触れてみませんか?
絵の具は、今でこそ学校でも使われるほど定番の画材。今も昔も、その豊かな色彩と表現力で多くの人の心を惹きつける力があります。ぜひ今回紹介した歴史やアイテムを通して、絵の具の魅力に浸ってみてくださいね。
絵の具以外にも、初心者の方におすすめの画材はたくさんあります。こちらの記事では、初心者におすすめの画材や道具の種類について解説していますよ。